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「リビンマッチ・土地活用」今回も前回同様「農地バンク」についてです。
前回、農地の活用法として期待される農地バンクについて、主にその設立の経緯と目的についてのご紹介をいたしました。
ここでは農地バンクの仕組みと、そのメリットやデメリットについて考えていきたいと思います。
農地バンクの仕組み
農地バンクを提供している都道府県別に設置されている農地中間管理機構は、農地を持て余している農家(出し手)から、賃料を払って借り上げることで農地を集めます。
集められた複数の農地は、ある程度の規模にまとめられ、大規模に農業を行いたい農家(受け手)に貸し出されるというのが農地バンクの基本的な仕組みになります。
したがって、出し手は農地中間管理機構から賃料を受け取り、受け手は機構に賃料を支払うという形をとっていますから、出し手と受け手の賃料が同じであれば、機構の運営費しか掛からないということになりますが、現実にはそう上手くいきません。
農地バンクは、国が出し手の農地を無制限に集めて賃料を支払い、受け手が現れるまで国が維持管理してくれるといったような、農地所有者(出し手)にとって夢のような制度には当然なっていません。
機構が借り受けるのは、受け手が希望する地域に含まれる農地だけです。
出し手としては、貸し出すことを希望すれば機構のリストには載せることはできますが、その状態では受け手が現れるまで待つことになり、賃料を得られる状況にはなりません。
たとえ受け手がその農地を希望し、機構が借り上げることになったとしても、受け手と賃料などの条件で合意できなければ貸し出されることはなく、1~2年維持管理を機構がしてくれるだけとなります。
結果的に受け手が見つからない農地は所有者に返されることになります。
農地中間管理機構はあくまで出し手と受け手をつなぐ役割であり、単に持て余した農地にお金を出すような制度ではないので気を付けましょう。
農地バンクで無事に出し手と受け手のマッチングができたとして、機構が農地を借り受ける期間は、原則として10年以上とされています。
出し手としては10年を長いと見るか、短いと見るかは判断が分かれるところです。
その農地を将来もまったく使う予定がないのか、また所有者が高齢であるならば相続のことまで充分に考慮しておく必要があります。
農地バンクの利用が進まない理由のひとつとして、農地は形式的には機構に貸すことになりますが、実際には受け手が使うので、途中で返すように訴えても応じてはもらえないというケースがあります。
また、農地を機構以外にも売買や賃貸する可能性が考えられるのであれば、機構に貸すことで活用の自由が奪われるのを嫌い、貸し出すことに躊躇する土地所有者もいるはずです。
また、農地バンクの賃料は、一般の農地と同じように地域によってその水準は異なります。
基本的には似たような農地の賃料に合わせて農地バンクの賃料も決められますが、受け手の希望が安ければ、賃料は安くなり固定されません。
賃料を安くすれば成約していたものを、固定することによって契約不成立にしてしまうというのは、農地バンクの趣旨からは外れてしまいます。
農地バンクの目的が農地の集積化と利用率を向上させることである以上、出し手の賃料水準を守ることよりも受け手の意向が強くなってしまいます。
となると当然、賃料は地域の水準より高く機構が借り受けることはなく、逆に受け手の意向で安くなる可能性は十分あり、言ってしまえばタダ同然の金額というのもあり得ます。
このように、機構に貸し出すことで安定収入が得られるというアイデアで始まっている農地バンクでも、賃料は受け手次第で下がってしまうということです。
農地バンクの特徴
農地バンクには多くのメリットがあるとされており、確かにメリットはあるのですが、デメリットと表裏一体となっている部分も多くあります。農地の所有者は将来的な展望も検討したうえで選択しなければなりません。
農地バンクを利用して不要な農地を活用してもらえれば、使っていない土地から賃貸料を得ることができます。
賃貸料は前述したように、農地の場所や面積とともに受け手の意向によって左右され、農地バンクの目的も受け手を味方にしたものなので、タダ同然になる可能性もあります。
しかし、ただ土地を遊ばせておくよりはマシともいえます。
農地をタダで貸して耕作してもらい、水の料金負担をしてでも農地が荒れることを防いでもらう農家さえいるのが現実であり、そんな中で農地を管理してもらえるだけでもありがたいと考えられます。
農地は定期的に手入れをしないと価値がどんどんと下がっていきますので、貸し出すことによって農地の価値を下げずに済みます。
それにいざ農地を貸そうと思っても、これまでは農地の貸し出し先を自力で見つけなければならなかったのに対し、農地バンクでは自分で探す必要がありません。
これはメリットといえるかもしれませんが、前述したとおり農地バンクであっても利用希望者がいない場所の農地は借りてもらえるとは限りませんし、誰が借りるかはわからないという点はデメリットといえるかもしれません。
自分の農地に見ず知らずの他人が入ってくるということに抵抗感を覚える農地所有者は多く、農地の賃借は相手との関係性が重要視され、使ってくれるのであれば誰にでも貸すというのは極めてまれです。
こういった感情的な部分というのは、経済的な面から考えればあり得ないと思われますが、農地バンクの利用が進まないのはこういったことも理由になっています。
また、耕作放棄地は2017年からは、農地であっても特別な税率を適用して、増税することが決まりました。
これは耕作放棄地を減少させるとともに、農地バンクの利用者を増やすことにもつなげる措置です。
土地の所有者には毎年固定資産税がかかり、農地の所有者も例外ではありません。
固定資産税は土地の用途、地目によって大きく変わるのですが、その中で農地は圧倒的に優遇されていて、最も税率の低い地目となっています。
このため、これまでは農地であっても実質使っていない耕作放棄地として土地を所有し続ける元農家がどんどん増えていきました。
今回の増税は、農地として税制面で優遇を受けながら耕作放棄地としての土地を所有するという「いいとこどり」を防ぐねらいがあります。
農地バンクを利用することで他の誰かに農地として使ってもらえるわけですから、耕作放棄地となることはなく、すなわち増税をされることはなく、税金対策となります。
農地バンクの課題
農地バンクの目標達成率は低く、農地を所有する人が遊休農地や耕作放棄地を手離さないために、農地を集積化できていないことが原因です。
固定資産税の増税で農地バンクの利用を促してはいますが、農地を他人に使われる抵抗感というのは生半可なものではないようです。
農地がよそ者に使われる不安感はお金の問題ではないので、現在の農地バンクの動きではカバーできていないといえます。
安倍政権の推し進める農地バンクは、農業の企業化をねらっているといえます。
この政策は戦後続いた小規模自作農からの大転換となり、農地の耕作放棄地が減らして大規模農地を増やすのは農業に活路を見出すものです。「失敗だ」との声も聞こえる農地バンクですが、その手法を改善することで農地所有者の心を解きほぐすような、細やかなサポートが期待されます。