「リビンマッチ・土地活用」今回は「老人ホームの土地活用」です。

突然ですが、いまや日本の高齢化はとどまることを知りません。

日本における65歳以上の人口は2014年には3,300万人にも達し、大人用おむつの売り上げが赤ん坊おむつの数を上回ったそうです。
高齢者福祉というのも日本にとっての重要な社会貢献のひとつとなります。

土地活用において、老人ホームを建てるというのも選択肢になるかと思いますが、現実問題としてメリットのある事業なのでしょうか?
いわゆるシルバービジネスの可能性に見通しはあるのか、よくわからないという方もいらっしゃるかと思います。

今回は老人ホームとしての土地活用をご紹介したいと思います。

老人ホームとしての土地活用とは

老人ホームとひとくちに言いましても、その特徴によって「老人福祉施設」と「有料老人ホーム」に大きく分けられています。
双方とも老人福祉法を根拠とした老人福祉をおこなう施設ですが、老人福祉施設は公的施設、有料老人ホームは民間施設になります。
先ほどのシルバービジネスというのは、民間施設である有料老人ホームを指しています。
では一方の老人福祉施設はどう違うのでしょうか?
ここでまず、老人福祉施設の例として「特別養護老人ホーム」をとりあげて具体的に説明していきたいと思います。

特別養護老人ホームは介護老人福祉施設であり「公共事業」になります。
この公共事業という点で、特別養護老人ホームは個人での経営が許されていません。
特別養護老人ホームの設置と運営は、都道府県や市町村などの地方自治体か、医療法人、社会福祉法人等に限定されています。

つまり認可を受けて社会福祉法人をつくり、その社会福祉法人により運営しなければならないのです。
しかも肝心の土地は、その社会福祉法人に無償で寄付しなければなりませんので、土地の所有は自分ではなくなり、社会福祉法人の所有となります。

「とても土地の有効活用とはいえない」かとも思いますが、当然その土地は相続財産ではなくなりますので、相続税対策にはなります。
また社会福祉法人の理事長となって、自ら特別養護老人ホームを経営することができます。

各地域の自治体の発行している「特別養護老人ホームの建設の手引き」における、建設用地の条件から総合しますと「広い敷地をもっていて、他に有効な相続税対策の方法がなく、社会貢献活動への意識が高い人」には、ある意味での有効な土地活用といえるかもしれません。

自分の土地の所有ではなくなるため、相続税対策としてはこれ以上ありませんし、ホームの建設には国の補助がでるため、大半の工事代をまかなうことができます。

老人福祉施設にはほかにも老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホームなどがあり、いずれもそれぞれに構造、定員、利用者一人当たりの基準面積などが決められていますが、特別養護老人ホームと立地条件および建設用地の条件は同様になっています。

一方、有料老人ホームはどうなっているのでしょうか?
施設の種類としてはいくつかあるのですが、ここで紹介しますと
・介護付き有料老人ホーム
・住宅型有料老人ホーム
・健康型有料老人ホーム
・サービス付き高齢者住宅
・通所介護施設(デイサービス)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・小規模多機能型居宅介護施設
・認知症対応型生活介護施設(グループホーム)
があり、このうち介護付き有料老人ホームと小規模のデイサービス、そして小規模多機能型居宅介護施設とグループホームは、「総量規制」のある施設です。

ここでいう総量規制とは、特定の地域に施設が際限なく増え続けることを防ぐために行われます。
なぜ総量規制が設けてあるのかというと、施設利用者が介護保険の給付対象となるからです。

介護保険で自治体が利用料金の9割を負担しますので、施設数が増えて介護保険利用者が増え続けますと、当然自治体の予算を圧迫することになりますので、ある程度の数を規制する必要がでてくるのです。
有料老人ホームを建設するには都道府県知事、政令指定都市長または中核市市長への届け出が必要となりますが、総量規制のある施設に関してはまず自治体に問い合わせて設置が可能かどうか確認をする必要があります。
施設が足りている場合は建てられません。

ここまで有料老人ホームのうちの総量規制のある施設についてご紹介してきましたが、なぜ総量規制のある施設についてとりあげているかといいますと、土地の所有者にとってねらい目といえる点があるからです。

もしお持ちの土地に総量規制のある有料老人ホームを建てることができれば、その後は総量規制に守られて競合となるライバル施設が登場しにくいといえます。

また、利用者が介護保険を利用できるために入居希望者が多く、それだけ安定して運営をおこなうことが可能になります。

ですから土地の所有者としても安定した賃料収入が確保できるため、もし有料老人ホームをお考えであれば、まずは総量規制のある介護付き有料老人ホームと小規模のデイサービス、そして小規模多機能型居宅介護施設とグループホームをまずは検討すべきかと思われます。

ここで有料老人ホームのメリットとデメリットについて考えていきたいと思います。
まずメリットとしては高い収益性が見込まれることがあげられます。

一般の賃貸住宅に比べると有料老人ホームは、格段に高いといわれています。
老人福祉施設に関しては前にも書きましたが公的施設であり、運営は社会福祉法人となりますので利益をだすことはできませんが、有料老人ホームでは可能となります。

上述の通り総量規制のある施設ですと、介護保険給付対象者の利用者負担は1割となりますので、例えば月に一人10万円の利用料であれば、100万円の利用料が運営者に入ることとなります。
それがほぼ満室の状態で回りますので、大変優良な事業といえるかと思います。
土地と建物を貸し出す相手としても大変好案件ではないでしょうか。

次にあげるのは、土地のもつ利便性の有無に影響を受けにくいことです。
この点は、特別養護老人ホームなどの老人福祉施設とも同じなのですが、交通の便が悪かったり、施設の周囲に何もなかったとしても大丈夫です。

むしろ郊外の自然が豊かな環境が適しているとされる場合も多く、賃貸住宅としては向いていない土地の利用法としても可能性があるといえます。

そしてある程度のまとまった大きさの土地の活用としても有効といえるかと思います。
老人ホームには駐車スペースも含めてかなり広い土地が必要となります。
また同じ土地に老人ホーム施設のほかに、介護に関連した複数の施設を併設することができれば、経営の助けとすることも可能かと思われます。

また施設の種類によっては補助金や税の優遇など助成をうけることができるほか、住居系の施設であれば相続税や固定資産税の優遇をうけることができます。

ここからはデメリットをいくつかあげたいと思います。
ひとつめには施設の転用性が低いということです。

有料老人ホームは特殊な施設であるため、もし運営事業者が中途解約した場合、ほかの使い道がありませんのですぐに次の借り手である運営事業者を見つける必要があります。

もしできなければ事業化は困難となり、ローン返済のみが残る結果となってしまいかねません。
しかしそのような運営事業者は少ないため、できれば運営事業者との間での契約事項に中途解約のペナルティ条項をいれておくことが必要となってきます。

またローンの返済に関してですが、施設には先程申し上げたとおり広い床面積と大きな建物が必要となりますので、当然投資金額も億単位となることが多く、返済期間も長くなってしまいます。

現在予想される人口の推移をみても、介護の必要な老人の人口は2040年をピークに減少していくとみられているため、返済期間としても20年以内としたいところです。
ところが、土地活用にとって20年というのは長いものではなく、ローンの返済期間中に老人ホームのニーズが下がってしまうことも考えられます。
ですから、できれば融資額を抑えてローンの返済期間をなるべく短くした事業計画を用意することが重要となります。

さらには先述したとおり、2040年を境とした将来予想される介護市場の縮小が最大のリスクとして挙げられます。
最初はよくても後で必ずニーズの減少と施設の老朽化が待ち受けておりますので、やると決めたら今すぐにでも始めなければなりませんし、施設が役割を終えたあとのことまで考えておく必要があるでしょう。

老人ホームなどの介護業界は、需要の増大と減少が周知の事実となっている極めて、特殊な市場ということを認識しておきましょう。